月と太陽と

 「貴方は輝いているから」
  その言葉に、彼女は戸惑いと、悲哀の混ざった表情をした。
 「貴方は輝きたいの?」
  私は、輝きたかった。

  私はいつも光を見つめていた。
  眩しさに目を細めながら。
  そして私はいつも自分を見る。
  ごつごつした、丸い体。

  私は時に遠くを見つめていた。
  いや、遠くからやってくるものを。
  そして私はいつも考える。
  彼らから私は見えているのか、と。

 「輝いているのは貴方の方なのよ」
  そう彼女は言った。
 『私は輝いてなんかいない』
  二人の声が重なった。
 「私は照らしているだけだから」
 「私は自分では光れないから」
  それはそれぞれの願いか。
 「貴方は私が輝いていると言った」
  彼女は寂しそうな目をして、言葉を紡いだ。
 「けれど私は自分を見ることができない。
  貴方を見ることができない。
  白の世界が私のすべてだから」
 
   だからこんなにも光りを受けて輝く貴方が羨ましくも妬ましい。

  しかしその言葉が語られることはない。
 「結局誰も輝いてなんていないのかもね」
  自嘲めいたその科白に、その刃に、私は声を出す事ができなかった。


      私に光を
     私から光を


    ────みんな自分のことばかりだね
 
   ふとそんな言葉がかすれて消えた。
                輝き消える星々のそばで。

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