〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「うるさいな!おまえはだまってついてくればくればいいんだヨ!だいたいあの大 事な`ヴィアラの香辛料`をハチミツの壷に落として台無しにしちゃったのはおまえ がちょこまか逃げ回ったせいなんだゾ..............。」 明日は`新しいスラヴォの年を迎える祭り`の日。 祭りを盛り上げるのはフィナーレで料理される若牛の丸焼き。 その味付けに欠かせないのが二人の兄弟の家に代々受け継がれてきた秘伝の香辛料`ヴィアラ`。 昨日の夕方、二人は炊事場でふざけていてお母さんが作ったできたてのヴィアラの壷を ハチミツの壷の中に落としてしまい台無しに。お母さんはショックで寝込んでしまった。 ヴィアラを作るにはその年の新鮮な`ミールプラム`が必要なのだがそれは大変貴重なプラムで、 お父さんがやっとの思いで森の奧深く`鬼面の滝`のほとりに実っているのを採ってきたもの。 大事な祭りに間に合うように、二人は両親に内緒で、ミールプラムを捜しに森に潜ったのだ。 凶暴なサンテが二人を見つけて追い立て回す。ワケもわからず逃げ回っているうち に二人は崖の縁まで追い詰められてしまう。深い崖は底の方まで木々が生い茂り落ちた ら最後、森の一部になってしまうのは間違いない。 三匹のサンテはどう猛なくちばしをカチカチと鳴らしながら二人に詰め寄る。 かわいそうなパンサはわんわんと泣き出す。三匹のサンテは急にくちばしを鳴らすのを止めて逃げ出す。 フォルテは良くわからないがとにかくサンテがいなくなりほっとしたのでいつものとおりパンサの頭を撫でてなだめる。 ガサガサと大きな音を立てながら何かが近づいてくる。二人は怖くて抱き合いなが らその場にしゃがみ込む。 大きな毛むくじゃらの熊のような身体の大猿が現れる。顔は お面のようにつるつる、口からは恐ろしい牙がむき出している。その恐ろし気な顔を 見て二人は声を上げて泣き出す。 大猿の化け物`ガボン`はヘンは顔をしながら二人によ ってくる。フォルテは思わずナイフを構える。ガボンは一瞬ひるんだが、その長い腕 でフォルテのナイフを奪い取る。フォルテはパンサにも負けないくらい大声で泣き出 す。 ガボンは奪い取ったナイフをしげしげとながめて何か納得したようにうなずいて いる.....。突然ガボンは二人に襲いかかる。泣きじゃくる二人を脇にかかえながら ガボンは飛ぶような速さで森を走り抜ける。脇に抱えられながら二人はなぜか心地良くなり眠くなってくる。 気がつくと二人は良く知っている家の近くの森のほとりに放り出される。 もうすっかり日が傾き美しい夕焼けがヴォルグの村を包んでいる。フォルテが眠い目をこすり ながら立ち上がると、ガボンはナイフを渡そうと長い腕を伸ばす。フォルテはワケがわから ないままナイフを受け取る。ガボンは森に向かい戻ろうとするが、何かに気がつき振 り向く。 フォルテが振り向くとお父さんが立っている。お父さんはガボンの方を見て軽くうな ずく。ガボンもうなずき森の中に消える。 「お父さんはあの化け物知っているの?」 「あれはお父さんの森の友達さ......。さ、お母さんが待っている。帰るぞ。」 「お母さん....怒ってない?」 「ああ.....すごいコトが起きたんだ。お前達がハチミツ壷に落としたヴィアラが 一晩で今までにない美味しい味に仕上がったんだ。明日はその新しい味をみんなに味わってもらおう。」 「........ホントに?」 「ねえ....あの化け物...友達って言ったけど....なんなの?すごく気になるよ。」 「ああ....あとでゆっくり話すよ.....あれはトランペットの森の王様なのさ。人間が森を荒らさないように いつも見回っている。森を荒らす人間は容赦なく喰い殺されるが、森を大事にしてれば誰でも友達になってくれるよ。 お父さんは昔からあいつと友達なのさ。ナイフを見て父さんの子供達とわかったんんだろう。」 「森の王様かあ......食べられちゃうかと思ったヨ........」 三人は笑いながらお母さんが待っている家ヘと帰っていった。フォルテとパンサはお母さんのやさしい顔を見て一安心。 晩ご飯を食べるなりベッドに潜り込んで寝てしまった。 「あんまり叱らないでやって下さいね。明日はめでたい祭りの日なのですから。」 「わかっているさ。`森の王`にまた借りができたな.........ヤツも祭りに呼んでやりたいが........ 人間嫌いだからな....。」 お父さんとお母さんは顔を見合わせて笑った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~Story By Baron MoMonga1999.~~~ |