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  さすらうはきりさめ(流離うは霧雨)

 

 

 外では雨が降っていた。窓に勇んでぶつかって頼りなくガラスを伝っていく水滴を指で

なぞりながら時間を流していた。「なにやってるの?」とでも聞いて欲しかったが、振り向

くまでもなく部屋は空っぽである。空っぽである。

「しつこいなぁ」

わかりきった事をリピートしていたのは自分の感情。「だれにいってるの?」なんて誰も聞

いてくれない。

 窓の外で骨の折れた傘を閉じようとして、ずぶぬれになっている子がいる。なにか傘が

その子を濡らしているという滑稽さに見入ってしまった。必死なのが、なお可笑しい。

 

  形あるものは壊れる。形ないものも壊れる。

 

 さすらうはきりさめ。いつだったか寂しくて流した涙は、頬で蒸発し黒雲となってこの

雨を降らせている。あの子の汗はその雨に融け、私のカラダをつくる水になる。

 形ないものは一人になれないから"一つ"になる。

 

「ただいま」

うつむき加減に姉が帰ってきた。私は何も言わずに姉の顔を見た。

「ごめん、やっぱり私が悪かったわ」

姉は私の方を向いて両手を合わせた。……形ないものは壊れても、また一つになろうとす

るんだね。姉の頭も冷えたことだし。

「おかえり。お風呂、沸いてるよ」


友人の麒麟さんが、ホームページを開設した私の為に

わざわざ送ってきてくださいました(多謝)

どう考えても私よりも文章書くの上手です(苦笑)

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